2026.06.09
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こんにちは、大阪の阪急茨木市駅前のみやの矯正・小児歯科クリニックです。
矯正相談を受け、抜歯を伴う矯正治療を提案された場合にインプラントアンカーの使用が必要と言われること少なくありません。
インプラントアンカーは矯正治療のために顎の骨にネジを打ち込む治療です。
外科処置を伴うため、痛そう、怖そうと感じるのも無理はありません。
「矯正治療はしたいけど、インプラントアンカーはしたくない」
そのような質問を受けることも多いため、今回はインプラントアンカーを使用しない矯正治療についてお話したいと思います。
1997年に嘉ノ海先生(姫路・カノミ矯正小児歯科クリニック)が世界で初めて論文報告を行ったものが矯正用インプラントアンカーの始まりと言われています。
その後、ネジタイプやプレートタイプなどのインプラントアンカーが研究・開発され、現在では世界的に一般的な矯正治療の選択肢となっています。
歯を抜いて矯正治療を行う場合、引っ張り合ってスペースを閉じるため、前歯は奥へと移動し、奥歯は前へと移動します。
抜歯を行い矯正治療を行う場合、必ずどの程度前歯を後ろに、奥歯を前に動かすのかを治療計画を立てる時点で計算しています。

最小の固定の場合は、奥歯が抜歯スペースの半分以上前にきており、前歯が奥へ移動する量は少なくなります。こういった治療計画の場合、一般的には治療の難易度は低いことが多いです。
一方で、最大の固定の場合は、奥歯が抜歯スペースの1/4程度しか前方に移動しておらず、残りの3/4のスペースが前歯が後方へ移動しています。こういった治療計画の場合、一般的には治療の難易度が高いことが多く、後述するヘッドギアやアンカースクリューの使用が重要となってきます。
少し専門的な話になりますが、
臼歯(奥歯)の前方への移動が抜歯スペースの1/2以上許容される場合を最小の固定
臼歯(奥歯)の前方への移動が抜歯スペースの1/4~1/2許容される場合を中等度の固定
臼歯(奥歯)の前方への移動が抜歯スペースの1/4以下しか許容されない場合を最大の固定と言い、矯正の先生たちの会話を聞くとこのような言葉を使用していることもあるかもしれません。
それぞれミニマムアンカレッジ、モデレートアンカレッジ、マキシマムアンカレッジとも呼びます。

インプラントアンカー(歯科矯正用アンカースクリュー)を使用すると、チタン製の小さなネジのような器具が骨の中に打ち込まれ、骨にしっかりと埋まっているため、アンカースクリューと歯を引っ張り合うと、骨に埋まっているアンカースクリューは動かず、歯のみを動かすことが可能です。それにより、奥歯を前に動かさないように固定したり、反対に奥歯を前に動かしたい場合など、より治療計画通りに治療をすすめていくことが容易となりました。
つまり、ミニマムアンカレッジの場合のような、治療の難易度が低く固定の必要性が低い場合はインプラントアンカーは必要になりませんが、モデレートアンカレッジ、マキシマムアンカレッジのような治療の難易度が高くなり固定の必要が高い場合にインプラントアンカーが必要となるのです。
インプラントアンカーが存在しなかった1990年代後半までは、ヘッドギアやパラタルアーチなどを固定源として矯正治療を行っていました。
これらは患者の協力性に依存するため、使用時間が短い場合などは十分な固定が得られずうまく治療できないケースがありました。そのため患者の協力に依存しない装置として矯正用インプラントアンカーの開発に至ったと聞いています。
有名な映画であるワイルドスピードでこのようなやりとりがありました。(若干違うかもですが・・)
「お前らは車がなければ何もできないんだ」
「いや、車があれば何でもできる」
矯正治療におけるインプラントアンカーも同じようなイメージがあります。
インプラントアンカーを使用することで、従来であればかなり難しかった治療も患者の協力に依存せず矯正治療ができるようになりました。
極論をいえばインプラントアンカーを使用すればなんでもできるという感じでしょうか。
最近の矯正治療しか学んでいないと、基本的にインプラントアンカーありきで診断や治療が行われてしまいます。
インプラントアンカーを使用できない、使用したくないといった場合にそのような難易度の高い治療を行うことができないということになります。
アンカースクリューの産みの親として世界的に名が知られ矯正治療の新時代を切り開いたパイオニアである師の元、2024年12月まで12年間勤務しました。
そこでアンカースクリューを使用して矯正治療をするのは本当に必要なケースのみでした。アンカーを使用しない矯正治療の術(すべ)を熟知しているからこそ、本当に必要なケースが選別できるのです。

インプラントアンカーはヘッドギアで代用します。
ヘッドギア矯正の歴史は古く、1875年くらいには使用が開始されたと言われています。
積極的に使用されだしたのは1940年代と言われその頃からヘッドギアに関する研究が盛んに行われています。
医学は時代とともに変化します。古い医療が新しい研究により、有用性が認められない場合は淘汰され使用されなくなります。反対に古くから行われていた医療行為に対し、作用機序の解明や新しい効果が判明し再度見直されることも多いです。
研究結果は日本だけでなく海外の論文や学会にて報告されます。
European Journal of Orthodonticsというヨーロッパの矯正学会の雑誌にもヘッドギアに関する論文が2025年6月に掲載されていました。
具体的には小児のヘッドギア矯正の時期による、犬歯や大臼歯(奥歯)の生え方への影響についての内容です。
最新の論文報告でも掲載されており、世界的に見ても、ヘッドギアが古い廃れた矯正治療ではないことがわかります。
2020年の矯正雑誌に私が執筆したヘッドギアに関する論文が掲載されその年の論文賞を受賞しました。論文執筆の中でかなりの数のヘッドギアの論文を読んでおり、ヘッドギアとともに歯科医師人生を歩んできたと言っても過言ではありません。矯正器具の中でも、圧倒的に私はヘッドギアについて勉強してきました。多くの先生が矯正の中でも得意な装置は異なると思いますので、ご相談される場合はそのような視点を持ってお話を聞かれるのも良いと思います。
ヘッドギアは決して廃れた古い装置ではなく、他の装置に代替できない、世界的に今も使用されている装置です。
この症例は成長が終了している方で、一般的な矯正治療としてはインプラントアンカーを提案されることが多いケースです。
相談の上、上下4本抜歯矯正を行うが、インプラントアンカーを使用せずヘッドギアを使用することとしました。
インプラントアンカーとは異なり、ヘッドギアの使用時間が大切となります。
きちんと使用時間を守っていただき、インプラントアンカーを使用せずとも最大の固定を達成し改善できました。
治療後の口の写真やレントゲン写真をみても、きれいに口元が下がっているのがわかります。
初診時:18歳男性
主訴:出っ歯・口元が出ている
治療期間:約30か月
治療内容:マルチブラケット・ワイヤー・ヘッドギア
費用:基本検査22,000円・精密検査・49,500・契約料82,5000 +毎月の調整料5,500/月
治療上のリスク:歯磨き不良の場合はむし歯になる可能性・習癖や成長に伴う後戻りの可能性・根吸収や歯肉退縮の可能性


インプラントアンカーの使用がここまで一般的になる、2010年頃までは基本的にはインプラントアンカーを使用していませんでした。
大人の方もヘッドギアを普通に使用していた時代があります。
新しい技術が絶対的な治療とは限りません。
インプラントアンカーを使用しなくても、きちんとヘッドギアを使用できるのであれば大抵の矯正治療は可能です。
ただし、インプラントアンカーが開発された経緯にもあるように、インプラントアンカーがあれば治療の難易度が大きく下がるケースもあることは事実です。
サンプリングバイアスもあるかと思いますが、インプラントアンカーを使用した症例よりも、インプラントアンカーを回避したいからヘッドギアで治療したいという思いの強い症例の方がきれいに治療が終了していると感じます。
これは矯正治療を受動的に受けるか、能動的に受けるかの違いが大きいと思っています。
インプラントアンカーを使用した場合にも治療の中盤から終盤にはゴム掛けを行ってもらうことも多いです。
自分で歯並びを治すという思いが強い方は協力性も良く、非常にきれいに改善してくれるのです。
お子さんの生え変わりや歯並びのことなど、ご不安な点や、気になる点があれば一度ご相談ください。
みやの矯正・小児歯科クリニック
大阪府茨木市別院町4-15 別院町・掛谷第6ビル
記事の監修者情報| 院長 宮野 純一
(みやの矯正・小児歯科クリニック)
矯正治療はもちろん、子供の成長発育や小児歯科治療に関しても専門医から直接指導を受け自己研鑽してきました。 子供矯正のスペシャリストとして保護者が安心して任せられる矯正治療をご提供しています。
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